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2005.10.29

初心に還る-自転車キンクリートSTORE『ブラウニング・バージョン』

自転車キンクリートSTORE テレンス・ラディガン3作連続公演
『ブラウニング・バージョン』
10/28(金) 19:05-20:55@俳優座劇場

舞台はイギリスのパブリックスクール。明日で学校の寮(教職員宿舎)を去ることになった老古典教師アンドルウの、一夕のものがたり。教師としても、妻ミリーとの夫婦生活についても、自分が落伍者であることを認めていた彼は、最後の日に今までに無いほど心を激しく揺さぶられる出来事と対面する。

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わたしがこの劇団に求めるのは、よく練られた、面白うてやがて悲しき(でもオモシロイ)オリジナル現代モノ、なので。翻訳物と聞いた時はパスを決め込んでおりました。そこへ友人が「あれはいいよー」と勧めてくれたこと、e+で得チケを販売していたこともあって「それじゃ、まあ」と気軽な気持ちで見に行くことになりました。ら、これが私には大当たり!

いやはや。翻訳物だからって毛嫌いしてるといけませんな。
訳が演出家の鈴木裕美さんの手によるところ、も大きいのでしょうが。わたしが好きで、ずっと魅せられていた「じてキンの真髄」がそこにはしっかりと流れていました。

生命を維持するために必要なものが食事・睡眠・性的なもの、とすれば。「人間として」の心を維持するために必要なのが、「愛情および承認」欲求。ひとこと「愛情」といっても、そこに含まれる情は多種多様で。肉体的、金銭的といったエロスな愛情もあれば、それと真逆に位置するアガペー的な(自己犠牲的、精神的な)愛情もある。お互いの望むものと与えられるモノが食い違えば、それは「愛情を与え合っている」ように見えて「お互いがただ渇きあって水を欲しいと叫び、ののしりあう」ことになる。そのベクトルの食い違いに、ほの苦い(当事者にとっては苦いけど、「箱の外」から眺める観客にとっては笑いを誘う)悲喜劇が生まれるわけで。

劇場に居る間、ずっと私の中に重なっていたのは『ソープオペラ』の鮎川夫妻のやりとりでした。「変われず」にいる自分の焦り、パートナーの関心が以前のそれと質を変えてきたのでは、との(焦りから生まれる悪循環な感情でもあるのですが)気持ち。それらが全て凝縮された、

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『私は、今の自分の方が、ずっと好きなの---
だから、あなたも嫌わないで貰いたいのよ、だから---

だから、ほかの人を好きにならないで』
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の部分でした。

10年前に見た時(再演版でした)で撃ち抜かれた言葉と、その底にあるものとに。10年の時間を経て、再会したのですが。その10年で得たもの、失ったもの、変わったもの、変わらずにいるもの。
人間はどうしようもないくじたばたしてて、かみあわなくているけど、それでも「いとおしい存在」なんだ、と。ラディガンも、鈴木裕美さんも、その目線が共通しているのでしょうね。

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